倉庫が建ち並ぶ港湾地域やレトロな雰囲気を持った倉庫が、新たな装いで生まれ変わった例が各所で見られます。使用頻度の低下した倉庫を利用して新たな観光資源として、また居住場所として再活用されているのです。倉庫は、レンガつくりであったり、レトロな意匠を持っていたり、広い内部空間を自由に使える、温度変化が少ない、音が洩れにくいなどの特徴があります。そうした倉庫の利点を生かして再利用されている例も多くなっているのです。
倉庫が観光資源になっているところとして有名なところは日本全国にありますが、誰もが思い浮かべるのが函館の赤レンガでしょう。明治40年に立てられたレトロな赤レンガの倉庫を利用して、イベントホール、ミュージアム、ショッピングモール、レストランなどの複合施設として北海道を代表する観光地のひとつになっています。そして特筆すべきは、建ち並ぶ倉庫の3分の2は、きちんと倉庫の機能を果たして現役であること。港湾都市函館の象徴でもあるのです。
倉庫が資料の保存などに向いていることや、建てられた時代の雰囲気をよく残していることなどを生かして、資料館などに生まれ変わっている例もあります。米どころとして名高い山形県の庄内、その中心である酒田市には農業用の倉庫を利用した資料館やレストランなどがあります。築百有余年という倉庫は、日本人にはどこか懐かしい外観。当時の倉庫の特長を生かして整備された施設は、地域の情報発信基地としても賑わっています。そして倉庫のほとんどが今も農業用の倉庫として利用されています。
倉庫が色々な形で利用されているのは、日本ばかりではありません。ニューヨークには倉庫に多くのアーティストが住むようになり、有名になったソーホー地区があります。倉庫の内部のがらんどうの空間を利用して広いアトリエが必要なアーティストたちが集まるようになり街中の倉庫はおしゃれな居住地、レストラン、ブティックなどに変貌しました。現在では、ソーホーはおしゃれなブティックが建ち並ぶハイソな街に変わっています。
倉庫が赤レンガで造られているのはヨーロッパにも多い風景です。ドイツの第2の都市、ハンブルク。港の周囲は、いくつもの水路によってつながれ、そこには無数の橋がかかっています。そしてそれを取り囲む森。「水と緑の都」と呼ばれるこの街には赤レンガで造られた倉庫が建ち並び、世界で最も大きいと言われる美しい倉庫の街を形成しています。水辺に並ぶ赤レンガの倉庫、どこかほっとするエキゾチックな風景を形作る倉庫は、重要な産業拠点であると共に、多くの観光客を集める観光拠点でもあるのです。